大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 平成11年(ワ)17057号 判決

原告 A

右訴訟代理人弁護士 尾崎純理

同右 北村晋治

被告 B

被告 C

右両名訴訟代理人弁護士 田邊雅延 同右 市野澤要治

同右 北村聡子

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は、原告の負担とする。

事実及び理由

第一当事者の求める裁判

一  請求の趣旨

1  被告らは、原告に対し、連帯して、金一億円及びこれに対する平成一一年八月六日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員の支払をせよ。

2  訴訟費用は、被告らの負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二事案の概要

一  争いのない事実

1(一)  原告(昭和一七年四月一三日生)は、洋品店を営んでいる者である。

(二)  被告B(以下「被告B」という。)は、平成元年一〇月当時、明治生命保険相互会社(以下「明治生命」という。)千住支社北千住西営業所の営業員であり、同年八月からは支部長として営業所長の補佐及び営業職員の新規採用や育成業務に従事していた。

(三)  被告C(以下「被告C」という。)は、平成元年当時、明治生命千住支社北千佳営業所長として変額保険契約の募集等の業務に従事していた。

2(一)  原告は、平成元年一二月一日、明治生命との間で、別紙変額保険契約目録記載の各変額保険契約(以下、その記載番号により「本件変額保険契約(一)」のようにいい、その全部を指す場合には「本件各変額保険契約」という。)を締結し、同月八日、明治生命に対し、保険料等合計二億一七八九万一八五八円を支払った。

(二)  原告は、平成元年一二月八日、株式会社東京三菱銀行(旧商号・「株式会社三菱銀行」。平成八年四月一日に商号変更。以下「東京三菱銀行」という。)との間で、別紙消費貸借契約目録記載(一)の金銭消費貸借契約(以下、同目録記載の各契約をその記載番号により「本件消費貸借契約(一)」のようにいい、その全部を指す場合には「本件各消費貸借契約」という。)を締結した。また、原告は、東京三菱銀行との間で、平成二年一二月五日に本件消費貸借契約(二)を、同四年二月一七日に本件消費貸借契約(三)を、同五年四月一三日に本件消費貸借契約(四)をそれぞれ締結した。

3(一)  原告は、平成四年一二月二九日、明治生命との間で、本件変額保険契約(三)ないし(五)を解約し、解約返戻金を受領した。

(二)  原告は、平成五年六月一七日、本件各変額保険契約及びその保険料の支払のために締結した本件各消費貸借契約は、公序良俗違反又は錯誤によって無効であるなどと主張して、明治生命に対し、不当利得を理由として払込済みの保険料の返還を、東京三菱銀行に対し、本件各消費貸借契約に基づく各元金の支払債務不存在確認等を求める訴え(以下「前訴」という。)を東京地方裁判所に提起し(平成五年(ワ)第一一〇四四号)、後に予備的に、明治生命及び東京三菱銀行に対し、不法行為又は債務不履行に基づき、本件各消費貸借契約の各残元金、利息及び原告が期限の利益を喪失した日の翌日から完済までの遅延損害金相当額の損害賠償を求める請求を追加したが、前訴裁判所は、平成九年一月三〇日、原告の請求をいずれも棄却する判決を言い渡し、右判決は、確定した。

二  争点

1  不法行為(その一)(勧誘行為の違法を理由とするもの)

(一) 原告の主張

(1) 被告らの違法な勧誘行為

被告らは、平成元年一〇月、原告に対し、現実には相続税対策としては意味がないにもかかわらず、「相続税対策にいい保険がある。相続税もその保険ですべて支払うことができる。」と言って、また、運用実績が零パーセントやマイナスになる場合の説明をしないで「現在の状況から考えて運用実績は九パーセント以上になることは間違いなく、銀行金利より下がることは絶対にないので安心である。」「万一運用実績が銀行金利を下回る場合には、変額保険を解約すれば解約返戻金が戻るので全く心配ない。」と断定的な判断を提供して、さらに、被告らで保険料を一部立替払する等の違法な勧誘をした。その結果、原告は、明治生命及び三菱銀行との間で、本件各変額保険契約及び本件各消費貸借契約をそれぞれ締結した。

(2) 損害の発生

平成二年二月から三月にかけて株価が急落し、変額保険の運用実績も悪化したため、東京三菱銀行から原告へ金利分の追加融資がされなくなり、金利の支払を遅滞したため、原告は、東京三菱銀行に対する債務について期限の利益を喪失した。原告は、ダイヤモンド信用保証株式会社(以下「ダイヤモンド信用」という。)との間で、原告が東京三菱銀行に対して本件各消費貸借契約に基づき負担する債務を、ダイヤモンド信用において保証することを委託する旨の保証委託契約を締結していたが、右のとおり期限の利益を失ったため、平成一〇年四月、東京三菱銀行に対して借入金残額(利息、遅延損害金を含む。)を代位弁済をしたダイヤモンド信用から、金三億五〇七一万八四〇〇円の請求を受け、同額の損害を被った。

(3) 本件各変額保険契約は、特定の銀行からの借入れを前提とし、相続が生じ基本保険金及び変額保険金が支払われるまでは、銀行が金利分を追加融資し、右保険金の支払と同時に右銀行に借入金元本を一括して返済するというものである。したがって、右(2)で主張した損害は、東京三菱銀行が継続して原告に追加融資をし、将来において借入残額以上の保険金が支払われたならば生じないものであり、前訴判決確定後に追加融資がされなくなったことによって初めて損害が具体的に発生したことになるのである。前訴で原告がした不法行為の主張は、損害の具体的発生以前の段階での主張であるので、右主張をもって原告が損害を認識したとして時効期間が進行することはない。

このことは、本件各変額保険契約の一部(本件変額保険契約(三)ないし(五))が解約されていても同様であり、本件では、前訴判決確定後に追加融資がされなくなったことによって初めて損害が具体的に発生したことになる。

なお、原告は、前訴で東京三菱銀行に対して債務不存在確認を求めたのであるから、東京三菱銀行に対する債務の存在を前提とする本件の損害賠償請求をするには、前訴に併合して請求すると、いわば主位的請求のない被告らに対して予備的請求をすることになって訴えの利益を欠くし、別訴で請求すると、原告は、両訴訟で矛盾した態度をとらざるを得なくなる。したがって、原告は、前訴判決確定以前には、被告らに対して損害賠償請求のできる状態にはなかったのであり、前訴判決確定以前に時効期間が進行することはない。

(4) よって、原告は、被告らに対し、不法行為に基づく損害賠償として、連帯して、前記三億五〇七一万八四〇〇円の一部である一億円及びこれに対する不法行為の結果発生後である平成一一年八月六日から支払済みに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を支払うことを求める。

(二) 被告らの主張

(1) 本件各変額保険契約が相続税対策として意味がないこと、被告らが運用実績が零パーセントやマイナスになる場合の説明をしなかったこと及び原告に対し断定的な判断を提供したとの点は否認し、また、保険料を一部立替払することが違法な勧誘となるとの主張は、争う。

(2) 契約が有効に継続中の本件変額保険契約(一)及び(二)については、原告は基本保険金額として定められた額の保険金又は解約返戻金を受け取り得る利益・地位を現在まで享受し続けているから、契約締結の過程に違法があったとした場合の損害額は現在でも確定していないことになる。したがって、この部分についての原告の損害の主張は、失当である。

(3)<1> 前訴で原告が予備的に請求した被告らの違法な勧誘による損害は、原告が平成五年七月六日に本件各消費貸借契約の期限の利益を喪失したことに伴い残元金及びこれに対する利息を一括して支払う義務が生じたことにより損害額の算定が可能となったことを根拠とするが、その損害は、原告が本件において主張する損害と事実上同一のものである。

したがって、原告は、期限の利益を喪失した平成五年七月六日、又は、遅くとも前訴において不法行為の主張を予備的に追加した平成七年一二月一八日ころには、本件で原告が主張する損害とその加害者を知ったものである。

<2> 少なくとも、平成四年一二月二九日に解約された本件変額保険契約(三)ないし(五)については、解約された時点で解約返戻金の額は確定し、契約締結の過程に違法があったとした場合の損害額も確定したのであるから、この時点で原告は損害を知ったものである。

<3> そして、平成七年一二月一八日から三年以上経過したので、被告らは、平成一一年九月三日の本件第一回口頭弁論期日において、原告に対し、右損害賠償請求権について消滅時効を援用する旨の意思表示をした。

2  不法行為(その二)(前訴における偽証を理由とするもの)

(一) 原告の主張

(1) 被告らの偽証

(ア) 被告らは、原告の妻に対し、現実には、本件各変額保険の運用利率について九パーセントは間違いない、銀行金利より下がることは絶対にない旨の説明をしたにもかかわらず、被告Bは、前訴において、証人として「長い目で見れば九パーセントくらいは期待できるだろうと思っていたので、そのように言ったと思う」「私は銀行との関係は一切説明していません」などとあえて虚偽の証言をした。

(イ) 被告Bは、原告に対し、現実には、変額保険の運用実績につき銀行金利との関係で損が生じうる四・五パーセント、零パーセント、マイナスとなる各場合については説明をしなかったにもかかわわず、前訴において、証人として、運用実績四・五パーセントや零パーセントの場合についても説明したとあえて虚偽の証言をし、被告Cも、変額保険のリスクについては被告Bが説明したとあえて虚偽の証言をした。

(ウ) 被告Cは、現実には、原告にもその妻にも、セミナーの資料を示したり、交付したことはなく、被告Bも、現実には、原告又はその妻に対して「ご契約のしおり一定款・約款」を交付していないにもかかわらず、被告Cは、前訴において、右資料を説明に使い交付したとあえて虚偽の証言をし、被告Bもこれら書類を示し、交付したとあえて虚偽の証言をした。

(2) 損害の発生

被告らは、右の各虚偽の証言によって、原告の錯誤及び被告らの虚偽情報等の提供に関する事実認定について、前訴担当裁判官の判断を誤らしめたものであり、その結果、原告は、前訴で請求棄却の判決を受けた。そして、その判決が確定したため、その後、前記1(一)(2)のとおり、ダイヤモンド信用から三億五〇七一万八四〇〇円の請求を受け、同額の損害を被った。

(3) よって、原告は、被告らに対し、不法行為による損害賠償として、連帯して前記1(一)(4)のとおりの金員の支払をすることを求める。

(二) 被告らの主張

証人が虚偽の証言をしたことにより誤った一審判決が言い渡されたとしても、法は三審制度により十分に当事者の攻撃防御の機会を設けているのであるから、証言の真偽は、上訴審で主張立証を尽くして争うべき問題である。証人が偽証をしたとしてその者に対する訴訟を制約なく認めると、被告を取り替えることによって実際上同一の事件に関して裁判所の判断を繰り返し求め得ることになり、判決の既判力や再審制度が実質的に無意義となってしまう。そこで、民事訴訟の事実審の審理過程で偽証があったことを理由に当該証人に対して不法行為に基づく損害賠償請求ができるのは、偽証につき刑事上有罪判決が確定する等の特段の事情が存する場合に限られるべきであるが、本件においては、右の特段の事情がない。

第三証拠

本件記録中の書証目録記載のとおりであるから、これを引用する。

第四争点に対する判断

一  争点1(不法行為(その一))について

被告らの消滅時効の主張が認められるならば、原告が争点1(不法行為(その一))において主張する損害賠償請求権については、その成否について判断するまでもなく、理由がないことになるので、以下、まず、消滅時効について判断する。

1  証拠(乙一、二)と弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

(一) 一般に、変額保険とは、保険契約者から払い込まれる保険料のうち将来の保険金の支払に必要とされる部分を定額保険に関する勘定(一般勘定)とは別の勘定(特別勘定)として管理し、これを主に株式、債券等の有価証券に投資し、その運用実績に応じて保険金額や解約返戻金が変動する仕組みの生命保険である。そのため、保険契約者は、経済情勢や運用のいかんによっては高い収益が期待できる反面、株価や為替などの変動によるリスクを負い、しかも運用実績が直接保険金額に反映されるため、運用の成果もリスクも保険契約者に帰属する点に特徴がある。

(二) 変額保険は、昭和六一年七月に大蔵省の認可を受け、同年一〇月からその営業が開始された。そして、昭和六一年から平成元年ころにかけての株価の上昇を受けて、利回りのよい「財テク商品」として売上げを伸ばし、銀行からの融資により保険料を一時払することにより相続税の節税効果を狙う商品として、地価高騰で相続税の支払に悩む大都市周辺の不動産所有者を対象に広く売り出された。

(三) ところが、平成二年以降の株価の下落により、変額保険における特別勘定の資産の運用実績も悪化し、銀行借入れにより変額保険に加入した保険契約者らにとっては、受け取るべき解約返戻金が融資による一時払の保険料を下回る結果となった上、増大する借入金利の負担を余儀なくされることとなった。

(四) 原告も、相続税対策のために本件各変額保険契約と本件消費貸借契約(一)を締結し、本件消費貸借契約(一)の利息の支払のために、本件消費貸借契約(二)及び(三)を締結したが、その後、本件各変額保険契約の特別勘定の資産運用が極めて悪化していることを知ったため、平成四年一二月二九日に、本件変額保険契約(三)ないし(五)を解約し、その解約返戻金四二七二万二七八八円を得て、一時払の個人年金保険(一〇年確定年金定額型)に加入し、さらに、本件消費貸借契約(四)を締結し、本件消費貸借契約(一)ないし(三)の利息の支払に充てた。

(五) そして、原告は、前訴を提起し、本件各変額保険契約と本件各消費貸借契約が一体の関係にあって、その仕組みや内容の不当性及び違法な勧誘行為に照らし、公序良俗に違反し又は錯誤により無効であるとの主張をするとともに、平成七年一二月一八日付け準備書面で、予備的に、明治生命及び東京三菱銀行に対し、不法行為又は債務不履行による損害賠償を求めた。右の損害賠償請求において、原告は、原告が受けた損害として、本件各消費貸借契約の各残元金相当額と各契約締結日から期限の利益喪失の日(本件消費貸借契約(一)につき、平成五年七月六日、本件消費貸借契約(二)ないし(四)につき、同年五月二六日)までの約定利息相当額とその翌日から本件各消費貸借契約完済の日までの各約定遅延損害金相当額を主張した(なお、そのほかにも、ダイヤモンド信用に対し支払った保証料相当額や登記手続費用なども損害として主張した。)。

2  ところで、原告は、本件訴訟において、被告らの違法な勧誘行為によって本件各変額保険契約と本件各消費貸借契約とを締結させられたと主張しているところ、原告の主張を前提とすれば、原告は、本件各変額保険契約を締結させられた時点において客観的に損害を被っており、その額は、本件各変額保険契約のために出捐した保険料、予想される解約返戻金の額、本件各消費貸借契約に基づく債務の額などによって算定可能である。

そして、現に、原告は、前訴において、右1(五)のとおり、平成七年一二月一八日当時、本件各消費貸借契約の残元金、利息及び損害金の額等を前提として損害の主張をしていたのである。

本件訴訟において、原告は、前訴判決確定後、平成一〇年四月に、ダイヤモンド信用が東京三菱銀行に本件各消費貸借契約について代位弁済をしたことにより原告がダイヤモンド信用に対し三億五〇七一万八四〇〇円の求償債務を負担するに至ったとして、それが損害であるとの主張をしているが(前記第二、二1(一)(2))、右の求償債務は、原告が前訴において損害として主張した本件各消費貸借契約に基づく残元金、利息及び損害金と実質は、同一であり、被告らの勧誘行為に基づく同一の損害について観点を変えた損害額の主張をしているにすぎないというべきである。

そうすると、原告は、遅くとも、前訴において不法行為の主張を記載した準備書面を作成した平成七年一二月一八日当時既に右損害とその加害者を知っていたというほかない。

そして、右の時点から三年以上経過した平成一一年七月三〇日に原告が本件訴えを提起したこと及び被告らが原告に対し右消滅時効を援用する旨の意思表示をしたことはいずれも顕著な事実である。

3  もっとも、原告は、右消滅時効の完成を争うので、以下、その点に関する原告の主張について付言する。

(一) まず、原告は、原告主張の損害は、東京三菱銀行が継続して原告に追加融資をし、将来において借入残額以上の保険金が支払われたならば生じないものであり、前訴判決確定後に追加融資がされなくなったことによって初めて損害が具体的に発生したと主張する(前記第二、二1(一)(3))。

しかし、前示のとおり、損害は、本件各変額保険契約を締結した時点において客観的に発生していたものであり、将来において保険金が支払われた場合には、それによって、原告の損害が回復されたことになるにすぎない。したがって、将来において借入金残額以上の保険金が支払われる可能性があることをとらえて原告に現在損害が発生していないということはできない(追加融資がされるか否かは、将来において借入金残額以上の保険金が支払われる可能性の有無とは直接関係がなく、本件においては、追加融資がされなくなったことによって損害が具体的に発生したということはできない。)。

なお、損害の発生時期を以上のように見ないで、本件変額保険契約(一)及び(二)により借入残額以上の保険金が支払われる可能性が残っている以上損害は発生していないとするならば、本件訴訟の口頭弁論終結時においても原告には未だ損害が発生していないこととなり、その点で原告の請求は理由がないことになる。

(二) 次に、原告は、前訴判決確定前には、被告らに対して損害賠償請求のできる状態にはなかったとの主張もしている(前記第二、二1(一)(3))。

しかし、前訴で明治生命や東京三菱銀行に対し主位的に債務不存在確認等の請求をしていても、別訴において被告らに対して不法行為に基づく損害賠償請求をすることは何ら妨げられない。借入金債務の存否の点で両訴訟の主張が矛盾するとしても、それは原告が選択した法律構成の差にすぎず、現に、原告は、前記1(五)のとおり、右の債務不存在確認等の主位的請求においても、違法な勧誘行為の事実があったことを主張をしていたのであるから、両訴訟における事実主張に矛盾があるということはできず、被告らに対する不法行為に基づく損害賠償の別訴を提起をすることができなかったということはできない。

(三) したがって、消滅時効に関する原告の主張は、いずれも失当である。

4  そうすると、争点1(不法行為(その一))において原告が主張する損害賠償請求権は、時効により消滅したことになる。

二  争点2(不法行為(その二))について

1  証拠(甲二、四、乙一)と弁論の全趣旨によれば、原告は、前訴において証人として証言をした本件被告らに対し反対尋問権を行使し、反対証拠の提出によって右各証言の信用性を争い、自己の主張する事実を証明する機会が与えられていたが、本件被告らによる違法な勧誘行為があったとは認められずに敗訴し、同判決は確定したことが認められる。

2  本件訴訟の争点3における原告の主張は、前訴で認められなかった違法な勧誘行為のあったことを前提として、本件被告らの右1の証言が偽証であり、その偽証により本来勝訴すべき前訴において敗訴判決を受けたことにより損害を被ったと主張するものである。

3  しかし、民事訴訟法は、確定判決に対する再審事由のうち、証人等の「虚偽の陳述が判決の証拠となったこと」については、「罰すべき行為について、有罪の判決」が確定したとき等に限り再審事由になるとしている(同法三三八条一項七号、二項)。訴訟の過程において、自己の攻撃防御方法を尽くす機会と権能を与えられ、その結果として敗訴判決が確定した以上は、敗訴当事者は、その結果について自己責任を負い、ただ、判決の基礎が敗訴当事者の責めに帰し得ない事由によって不当であったことが明白となった場合にのみ、再審を認めるというものである。ところが、確定判決に対して不服のある者が、その判決の基礎となった証言を行った証人に対し、当該証人の偽証により敗訴判決を受け、その結果、損害を被ったとして、損害賠償の訴えを提起し、偽証により敗訴判決を受けた旨の主張をすることが無制限に認められるならば、再審事由としては制限を受けるべき偽証の主張が、相手方当事者を替えることによって無制限に認められることになり、再審事由を右のとおり限定した民事訴訟法の趣旨に反する結果となり、また、実質的な紛争の蒸し返しを許し、信義則(同法二条)に反する結果になる。

4  そこで、確定判決によって敗訴が確定した当事者が、当該判決の基礎となった証言を行った者を被告としてその者の偽証により敗訴判決を受けたことを理由として提起した損害賠償請求の訴えにおいては、右判決確定までの審理の過程において自己の責めに帰し得ない事由によって提出できなかった証拠又は右判決確定後に発見された新たな証拠によって、右証言が偽証であることが客観的に明らかになったと主張する場合に限り、偽証により敗訴判決を受けたと主張することが許されるというべきである。

5  ところが、本件訴訟において、原告は、被告らが前訴においてあえて虚偽の供述をしたと主張するのみで、前訴の審理の過程において自己の責めに帰し得ない事由によって提出できなかった証拠又は右判決確定後に発見された新たな証拠によって、右の偽証が客観的に明らかになったとの主張をすることはできず、そのような証拠の提出もできないから、前訴において被告らの偽証により敗訴判決を受けたとの主張をすることは許されないというべきである。

6  したがって、争点2(不法行為(その二))の原告の主張は、理由がない。

第五結論

よって、原告の請求は、その余の点について判断するまでもなく、いずれも理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法六一条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 岡久幸治 裁判官 都築政則 裁判官 日比野幹)

(別紙) 変額保険契約目録<省略>

(別紙) 消費貸借契約目録<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!